アルジースクラバーで栄養塩を下げる仕組み|光・波・刈り取りとリフジウムとの違い
アルジースクラバーは、網の上に芝状の藻を育てて刈り取ることで、窒素やリンを水槽の外へ出す装置です。考案者 Adey の特許をもとに、仕組みとリフジウムとの違い、運用の注意を整理します。海水水槽の栄養塩(硝酸塩・リン酸塩)を下げる方法には、水換え、プロテインスキマー、吸着剤、炭素源の添加など…

この記事のポイント
アルジースクラバーは、網の上に芝状の藻を育てて刈り取ることで、窒素やリンを水槽の外へ出す装置です。考案者 Adey の特許をもとに、仕組みとリフジウムとの違い、運用の注意を整理します。海水水槽の栄養塩(硝酸塩・リン酸塩)を下げる方法には、水換え、プロテインスキマー、吸着剤、炭素源の添加など…
海水水槽の栄養塩(硝酸塩・リン酸塩)を下げる方法には、水換え、プロテインスキマー、吸着剤、炭素源の添加など、いくつかの系統があります。アルジースクラバー(藻類スクラバー、英語では algal turf scrubber)は、そのうち「藻に栄養塩を取り込ませ、藻ごと水槽の外に出す」方式の装置です。この記事では、考案者が出願した特許の内容をもとに、仕組みと運用の考え方を整理します。
起源はスミソニアン協会に譲渡された特許
アルジースクラバーの原型は、Walter H. Adey が発明者となった米国特許 4,333,263「Algal turf scrubber」です。1980年10月に出願、1982年6月に登録され、権利はスミソニアン協会に譲渡されています。特許の存続期間はすでに満了しています(Google Patents:US4333263A Algal turf scrubber)。
この特許は、底生の微細な藻類が芝のように密に生えた状態(ターフ)を面の上で育て、その藻が水中の二酸化炭素や栄養塩、一部の汚染物質を取り込む性質を、水の浄化に使うものです。藻は光合成で酸素を出し、pH を上げる働きもあると書かれており、水槽では細菌による濾過の代わりに使う構想も示されています。
仕組みを支える3つの要素
特許の記述から、アルジースクラバーを成り立たせている要素は次の3つに整理できます。
- 光:自然光または人工照明で藻を育てます。特許は、人工照明ではメタルハライドランプが最も効率がよく、蛍光灯も使えるとしています
- 波のような水の動き:周期的に押し寄せる水の動きが藻の間を通り、藻の細胞と周りの水とのやりとりを高め、隣り合う細胞どうしが影になり続けるのを防ぐとされています。水槽では、水がたまると傾いて一気に流す仕掛け(ティッピングバケツ)でこの波を作る例が挙げられています
- 刈り取り:育った藻を面から削り取るか、網ごと取り出して収穫します
藻が育つ面については、目の大きさが 0.5〜5mm 程度のプラスチックの網が例として挙げられ、およそ 2.5mm が典型的とされています。
栄養塩は「刈り取って」初めて外に出る
藻が水中の窒素やリンを取り込んでも、藻が水槽の中にある限り、それらは系の中にとどまっています。栄養塩が水槽から取り除かれるのは、育った藻を刈り取って捨てたときです。藻が枯れたり剥がれたりして水槽に戻れば、取り込まれていた栄養塩も水に戻ってしまいます。
特許は、芝状の藻はより大きな海藻に覆われる前に収穫しなければならないとし、面が十分に粗ければ、刈り取ったあとに残った基部からすぐに再生すると説明しています。収穫のペースは光の強さ、水温、波の条件で変わるとされ、サンゴ礁を模した小さな飼育系での例として、乾燥重量で1平方メートルあたり1日約6g(光量 200µE/m²/s)、より強い光(500µE/m²/s)と低い栄養塩の条件では約12gを収穫したと記されています。µE/m²/s は光の粒(光量子)の量を表す単位で、サンゴ水槽の PAR の表示に使われる µmol/m²/s と同じ量を指します。
つまり運用の中心は、「藻をよく育てること」と「育った藻を取り出し続けること」の両方です。刈り取りを怠ると、栄養塩を外に出す働きは止まってしまいます。
リフジウムとは方式が別
藻で栄養塩を取り除く方法としては、サンプの一角で大型の海藻を育てるリフジウムもよく知られています。リフジウムの仕組みと管理はリフジウムによる栄養塩輸出で扱っています。どちらも「藻が取り込んだ分を取り出す」という点は同じですが、方式は別物です。
- 育てる藻:リフジウムは大型の海藻を区画の中で育て、アルジースクラバーは網などの面に付着して芝状に生える藻を育てます
- 水の当て方:アルジースクラバーは、藻の面に水の動きを強く当て、藻と水が触れる量を増やす設計です
- 収穫のしかた:リフジウムは育った海藻の一部を間引き、アルジースクラバーは面から藻を削り取ります
- ほかの役割:リフジウムは小さな甲殻類などの隠れ場所にもなりますが、アルジースクラバーは藻の面そのものが主役の装置です
運用で気をつけたいこと
- 栄養塩の下げすぎ:藻がよく育つと、硝酸塩やリン酸塩が測れないほど下がることがあります。サンゴにとって栄養塩はゼロがよいとは限らないため、栄養塩管理の考え方を踏まえ、測定しながら刈り取りの間隔や照明時間を調整します
- 光の漏れと置き場所:藻を育てる強い光が部屋や水槽に漏れないよう、覆いや置き場所を工夫します
- 夜間の pH:藻は光合成のときに二酸化炭素を使います。水槽の照明が消えている時間に藻の照明を点ける運用もあり、夜間の pH 低下についてはエアレーションとガス交換も参考になります
- 立ち上げ直後:藻の面ができあがるまでは取り込む量が小さいため、水換えやスキマーなどほかの方法と併用しながら様子を見ます
アルジースクラバーは、光と水の動きで藻を育て、刈り取りで栄養塩を取り出すという、原理の単純な装置です。水槽に合うかどうかは、置き場所や照明、刈り取りの手間をかけられるかどうかで変わります。導入する場合は、水質を測りながら少しずつ運用を合わせていってください。


