サンゴ水槽のエアレーションとガス交換|夜間のpH低下と溶存酸素を考える
サンゴ水槽のpHが夜間に下がる仕組みと溶存酸素量への影響、ガス交換を助ける工夫を整理します。昼と夜で変わる水槽内のpH サンゴ水槽のpHは一日の中で一定ではなく、照明が点いている昼間と消えている夜間とで緩やかに変動します。

この記事のポイント
サンゴ水槽のpHが夜間に下がる仕組みと溶存酸素量への影響、ガス交換を助ける工夫を整理します。昼と夜で変わる水槽内のpH サンゴ水槽のpHは一日の中で一定ではなく、照明が点いている昼間と消えている夜間とで緩やかに変動します。
昼と夜で変わる水槽内のpH
サンゴ水槽のpHは一日の中で一定ではなく、照明が点いている昼間と消えている夜間とで緩やかに変動します。日中は褐虫藻を含む多くの生体が光合成を行い、水中の二酸化炭素(CO2)を消費するため、pHはやや上昇しやすくなります。逆に照明が消えた夜間は光合成が止まり、サンゴや魚、バクテリアなどによる呼吸だけが続くため、CO2が水中に蓄積してpHがゆるやかに下降します。多くの水槽で見られる「明け方にpHが最も低くなる」という傾向は、この昼夜のガス交換バランスの変化によるものです。サンゴ水槽の水質管理|KH・カルシウム・マグネシウムの基礎で扱ったKHやカルシウムとは別の軸として、このpHの日内変動も把握しておくと、数値のブレに一喜一憂しにくくなります。
pHが下がる仕組み——CO2と呼吸
水中のCO2濃度が上がるとpHが下がるのは、CO2が水に溶けて炭酸を形成し、水を酸性側に傾けるためです。夜間はサンゴ・魚・バクテリアなど水槽内のあらゆる生体が呼吸を続け、CO2を排出し続けます。一方で光合成による消費が止まっているため、CO2は行き場を失って蓄積しやすくなります。生体量が多い水槽や、換気の悪い部屋に設置された水槽では、この夜間のCO2蓄積が大きくなりやすく、pHの低下幅も目立つ傾向があります。部屋そのものの二酸化炭素濃度が高い環境(人の出入りが少なく換気が乏しい部屋など)では、空気中のCO2が水面から溶け込みやすくなり、水槽側の対策だけでは改善しきれない場合もあります。
溶存酸素量にも目を向ける
pHの変動と並行して意識しておきたいのが、水中の溶存酸素量です。夜間は光合成による酸素供給が止まる一方、呼吸による酸素消費は続くため、溶存酸素量は昼間より下がりやすくなります。水温が高いほど水は酸素を溶かし込みにくくなるため、海水水槽の温度管理で扱った夏場の高水温対策は、pHだけでなく酸素供給の観点からも重要になります。生体量に対して水量やガス交換の機会が少ない水槽ほど、夜間の酸素不足が起こりやすい点は覚えておきたいところです。
ガス交換を助ける工夫
水中のCO2を排出し、酸素を取り込むガス交換は、主に水面での攪拌によって進みます。水流ポンプ(ウェーブメーカー)で水面をある程度波立たせておくことや、プロテインスキマーが稼働時に空気を巻き込みながら泡を発生させる仕組みそのものも、副次的にガス交換を助けています。エアストーンなどで細かい気泡を作り、水面付近の攪拌を増やす方法も、CO2の排出と酸素の取り込みを後押しする手段のひとつです。部屋の換気を行い、室内のCO2濃度自体を下げておくことも、水槽まかせにしない補助的な対策になります。
小型水槽・過密水槽ほど変動が大きい
水量に対して生体の量が多い水槽ほど、夜間のpH低下や溶存酸素の減少幅は大きくなりやすい傾向があります。水量が少ないナノリーフ(ナノリーフの始め方参照)では、同じ生体量でも希釈される水の絶対量が少ないため、夜間のCO2蓄積や酸素消費の影響を相対的に受けやすくなります。逆に水量に余裕のある大型水槽や、サンプを併設して総水量を稼いでいる濾過方式の水槽では、同じ生体量でも変動幅が緩やかになりやすいと言われています。魚やサンゴの数を急に増やした直後は、それまで安定していた夜間のpHや酸素量にも変化が出ることがあるため、生体を追加した後しばらくは様子を注視しておくとよいでしょう。
昼夜のバランスを整える視点
リフジウムによる栄養塩輸出で扱ったマクロアルジェは、光合成によってCO2を消費し酸素を放出するため、本水槽と逆の照明サイクルで運用すると、本水槽が消灯している夜間にリフジウム側で光合成が進み、水槽全体のpH変動を緩やかにする効果が期待されることがあります。栄養塩の輸出を目的として紹介した仕組みですが、昼夜のガス交換バランスを整える観点からも関連が深いテーマです。
観察のポイント
pHや溶存酸素は、海水水槽の水質検査で触れた測定項目のひとつでもあります。もし夜間から明け方にかけてポリプの開きが鈍い、魚の呼吸が浅く感じるといった変化があれば、pHや酸素の日内変動が大きくなっていないかを一度確認してみる価値があります。数値の絶対値よりも、日によって変動の幅が大きくなっていないかを継続的に観察することが、ガス交換のバランスを保つ手がかりになります。判断に迷う場合や、生体の様子に明らかな異変がある場合は、アクアリウム専門店や経験豊富な飼育者に相談することも検討してください。



