カルクワッサー(水酸化カルシウム)の使い方と注意点|pHの急変と強アルカリの扱い方
カルクワッサーはカルシウムとKHを一つの液で補える添加方法です。仕組み、上澄みを使う理由、pHの急上昇を避ける添加のしかた、SDSにもとづく強アルカリの薬品としての扱い方を整理します。カルクワッサーは、水酸化カルシウム(消石灰)を純水に溶かした液を、少しずつ水槽に加えてカルシウムとKH(アルカリ度)を補う方法です。

この記事のポイント
カルクワッサーはカルシウムとKHを一つの液で補える添加方法です。仕組み、上澄みを使う理由、pHの急上昇を避ける添加のしかた、SDSにもとづく強アルカリの薬品としての扱い方を整理します。カルクワッサーは、水酸化カルシウム(消石灰)を純水に溶かした液を、少しずつ水槽に加えてカルシウムとKH(アルカリ度)を補う方法です。
カルクワッサーは、水酸化カルシウム(消石灰)を純水に溶かした液を、少しずつ水槽に加えてカルシウムとKH(アルカリ度)を補う方法です。名前はドイツ語で「石灰水」を意味する言葉に由来します。手動添加・ドージングポンプとの比較はサンゴ水槽の添加剤運用の「添加方式にはいくつかの選択肢がある」の節で触れたので、ここではカルクワッサーに絞って、仕組みと使い方、強アルカリの薬品としての扱い方を整理します。
カルクワッサーで何が補えるのか
水酸化カルシウムが水に溶けると、カルシウムイオンと水酸化物イオンに分かれます。カルシウムイオンはそのままカルシウムの補給になり、水酸化物イオンは水中の炭酸の成分と反応して、サンゴが骨格づくりに使う炭酸イオンの側へ平衡を動かします。結果として、カルシウムとKHを一つの液で同時に補えるのが特徴です。骨格形成のしくみそのものはサンゴの石灰化と骨格形成のしくみで詳しく扱っています。
一方で、マグネシウムは含まれていません。三要素のバランスはサンゴ水槽の水質管理で解説したとおりなので、マグネシウムは別に測って管理する必要があります。
強アルカリの薬品として扱う
水酸化カルシウムは強い塩基性を示す物質です。厚生労働省「職場のあんぜんサイト」に掲載されている安全データシート(SDS)では、眼に対する重篤な損傷性が区分1、皮膚腐食性・刺激性が区分2、特定標的臓器毒性(単回ばく露)が呼吸器について区分1と分類されています。取り扱いでは保護眼鏡や保護面を着け、粉じんを吸い込まないよう換気することが求められ、眼に入った場合は水で数分間注意深く洗い、コンタクトレンズを外せる場合は外して洗浄を続け、直ちに医師に連絡するよう記載されています。酸と反応して発熱することにも注意が必要です(職場のあんぜんサイト:水酸化カルシウム モデルSDS)。
家庭の水槽まわりで使うときは、次の点を習慣にすると安心です。
- 粉を量る・溶かすときは保護眼鏡をかけ、顔を容器に近づけない
- 粉が舞わないよう、静かに水へ入れる
- 粉と液は子どもやペットの手の届かない場所に保管し、食品の容器と取り違えない
- 手や皮膚に付いたら多量の水で洗い流す
製品として売られているカルクワッサー用の粉を使う場合も、まず添付の説明書と注意書きを読んでから扱ってください。
空気に触れると効き目が落ちる
同じSDSには、水酸化カルシウムが大気中の炭酸ガスを吸収して、次第に炭酸カルシウムになると書かれています。カルクワッサーの液を空気にさらしたままにしておくと、表面に白い膜ができたり、底に沈殿がたまったりするのはこのためです。炭酸カルシウムに変わった分は、水槽に入れてもカルクワッサー本来の働きをしません。
また、水酸化カルシウムは水に溶けにくい物質です。溶け残りが底に沈んだ状態の液を作り、静かに置いて濁りが沈んだ透明な上澄みだけを使うのが基本になります。粉は密閉して保管し、作った液も空気に触れる面を小さくしておくと、効き目の低下を抑えられます。
添加のしかたとpHの急変
カルクワッサーは、蒸発で減った分の補充水として少しずつ加える使い方が一般的です。海水水槽の蒸発対策とATO(自動給水装置)のように補充を自動化し、その補充水にカルクワッサーを使う構成もあります。液を一定の速さで攪拌しながら供給する専用の器具もありますが、どの方式でも「ゆっくり、少しずつ」が原則です。
カルクワッサーは強いアルカリ性なので、一度に多く入ると水槽のpHが急に上がり、サンゴや魚、エビなどに負担をかけるおそれがあります。添加口はサンゴから離した、水流のある場所に置きます。補充装置が故障して液が一気に流れ込む事態も考えて、リザーバーの容量や安全装置を見直しておくと安心です。夜は光合成が止まってpHが下がりやすいため、夜間に添加して日内のpHの振れ幅を小さくする運用もあります。
添加量の目安は製品の説明書に従い、少量から始めてKH・カルシウム・pHを測りながら調整してください。測定の頻度は海水水槽の水質検査、pHの読み方はpH計の校正と測定値のブレが参考になります。
向いている水槽と組み合わせ
補充水に使う以上、一日に入れられる量は蒸発する量に左右されます。SPSが多く消費の速い水槽では、カルクワッサーだけでは追いつかないこともあり、カルシウムリアクターやドージングポンプと組み合わせる考え方もあります。複数の方式を併用するときは、合計でどれだけ補っているかを記録し、KHの数値を見ながら全体の量を決めるのが安全です。
カルクワッサーは仕組みが単純で、補充水の管理と一緒に回せるのが魅力です。強アルカリの薬品であることと、pHの急変という弱点を理解したうえで、記録と測定を続けながら使ってください。


