サンゴの水合わせ(アクリメーション)と導入手順|新しい個体を迎える最初のステップ
サンゴを迎えたときに欠かせない水合わせ(アクリメーション)の手順とポイント。温度・水質のすり合わせ方から導入後の観察までを解説。サンゴの選び方と持ち込み時のトリートメントや通販でサンゴを買うときに知っておきたい注意点で触れたように、良い個体を選び…

この記事のポイント
サンゴを迎えたときに欠かせない水合わせ(アクリメーション)の手順とポイント。温度・水質のすり合わせ方から導入後の観察までを解説。サンゴの選び方と持ち込み時のトリートメントや通販でサンゴを買うときに知っておきたい注意点で触れたように、良い個体を選び…
サンゴの選び方と持ち込み時のトリートメントや通販でサンゴを買うときに知っておきたい注意点で触れたように、良い個体を選び、必要な処理を済ませたあとに欠かせないのが「水合わせ(アクリメーション)」です。輸送で使われていた水と自分の水槽の水は、温度や比重、pHなどが異なることが多く、その差をいきなり埋めてしまうとサンゴにとって大きなストレスになります。ここでは、水合わせの具体的な手順と、導入後に見ておきたいポイントを紹介します。
なぜ段階的に慣らす必要があるのか
輸送用の袋や容器の中の水は、時間の経過とともに温度が下がり、生体の呼吸や排せつ物によって水質も変化していきます。この状態のサンゴを、いきなり自分の水槽の水に入れてしまうと、温度・比重・pHなど複数の要素が同時に急変することになり、組織へのダメージや後々のトラブルの引き金になりかねません。段階的に水質を近づけていくことで、この急変によるショックを和らげることができます。
温度合わせから始める
まず行うのは温度の調整です。届いた袋や容器を、蓋を開けずにそのまま水槽の水に浮かべ、15〜20分程度かけて水温を近づけます。このとき袋の中に直接水槽の水を入れないようにし、あくまで温度だけをゆっくり合わせる段階と考えます。急いで温度を合わせようとお湯や氷を使うのは避け、自然に温度差が縮まるのを待つのが基本です。ただし、袋を長時間そのまま放置するのも避けたいところです。密閉された袋の中は時間が経つほど酸素が減り、老廃物がたまっていくため、温度合わせは必要な時間にとどめ、だらだらと長引かせないようにします。
点滴法(ドリップ)で水質をすり合わせる
温度が近づいたら、次は比重やpHなどの水質を合わせる段階に移ります。代表的な方法が「点滴法(ドリップアクリメーション)」で、細いチューブを使って水槽の水を一滴ずつ、あるいは少量ずつ輸送水の入った容器に滴下していきます。容器内の水量が最初の倍程度になるまで、時間をかけて少しずつ薄めていくイメージです。急いで多量の水を一気に加えると、結局は急変と同じことになってしまうため、時間をかけることが最大のポイントです。目安として30分から1時間程度かけるケースが多く、デリケートな種類ほど慎重に時間をかける傾向があります。
種類によって時間のかけ方を変える
すべてのサンゴに同じ時間をかければよいわけではありません。ミドリイシ(Acropora)のようなSPS系は水質の急変に敏感とされ、比較的長めに時間をかけて慎重にすり合わせることが勧められます。一方、丈夫とされるソフトコーラル系は多少手順が短くても順応しやすい傾向がありますが、それでも段階を飛ばしてよいわけではなく、基本の手順は共通して守るべきです。個体のコンディションや輸送時間の長さによっても最適な時間は変わるため、様子を見ながら柔軟に調整する姿勢が大切です。
導入時の光と水流にも配慮する
水質のすり合わせが終わったら、いよいよ本水槽への設置ですが、置き場所の選び方にも注意が必要です。輸送や梱包時は暗い環境に置かれていることが多いため、導入直後にいきなり強い照明や強い水流の当たる場所に置くと、光や水流によるストレスが加わることがあります。最初は水槽の中でもやや光量・水流が穏やかな場所に置き、数日から1〜2週間ほどかけて、狙いの置き場所へ少しずつ近づけていくと、サンゴが新しい環境に順応しやすくなります。
導入後の観察ポイント
導入後の数日間は、ポリプがしっかり開いているか、組織の色や張りに変化がないかをこまめに観察します。粘液を多く出す、ポリプを閉じたままにする、組織の一部が白っぽく見えるといった様子は、環境変化に対するストレス反応であることが多く、必ずしも致命的なものとは限りません。ただし数日たっても改善が見られない場合や、症状が広がっていく場合は、水質や置き場所を見直す必要があります。急激な組織の後退が見られる場合は、SPSサンゴのRTN・STN(組織壊死)の原因と対処のような別の問題が関わっている可能性もあるため、状況が改善しないときはアクアリウム専門店やサンゴ飼育に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
水合わせは地味な作業に見えますが、新しい個体が水槽に馴染めるかどうかを大きく左右する重要な工程です。温度、水質、光や水流のすべてを一気にではなく段階的に近づけていくことを意識すれば、導入時のトラブルを大きく減らすことができます。



