CITES(ワシントン条約)とサンゴの輸入規制を知る|購入前に押さえておきたい実務のポイント
サンゴの流通に関わるCITES(ワシントン条約)の仕組みを、一次情報をもとに整理します。造礁サンゴの規制の考え方と、ホビイストとして知っておきたい実務上の注意点を紹介します。サンゴを飼育・記録していく中で、このサンゴは国際的な取引規制の対象になるのだろうかと疑問に思ったことがある方もいるのではないでしょうか。

この記事のポイント
サンゴの流通に関わるCITES(ワシントン条約)の仕組みを、一次情報をもとに整理します。造礁サンゴの規制の考え方と、ホビイストとして知っておきたい実務上の注意点を紹介します。サンゴを飼育・記録していく中で、このサンゴは国際的な取引規制の対象になるのだろうかと疑問に思ったことがある方もいるのではないでしょうか。
サンゴを飼育・記録していく中で、このサンゴは国際的な取引規制の対象になるのだろうかと疑問に思ったことがある方もいるのではないでしょうか。観賞用サンゴの多くは海外から輸入されており、その流通にはCITES(ワシントン条約、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)が関わっています。この記事では、CITES事務局やCITES公式の種データベースであるSpecies+で確認できる範囲の情報をもとに、造礁サンゴを中心とした規制の枠組みと、ホビイストとして知っておきたい実務上のポイントを整理します。
CITESとは何か、附属書の仕組み
CITESは、野生動植物の種を絶滅の危機から守るため、国際取引を規制する条約です。対象となる種は、規制の強さに応じて附属書I・II・IIIの3段階に分けられています。
- 附属書I:絶滅のおそれが特に高く、商業目的の国際取引が原則として禁止されている種
- 附属書II:現時点で絶滅の危機にあるわけではないものの、取引を厳しく管理しなければ将来的に絶滅のおそれが生じる種で、商業取引自体は可能だが輸出国政府が発給する許可書が必要になる
- 附属書III:締約国の一つが自国内の保護のために国際協力を求めている種
サンゴの取引を理解するうえでは、附属書IとIIの違い、特に取引が禁止されているわけではないが許可書などの手続きが必要になる附属書IIの位置づけを押さえておくことが重要です。
造礁サンゴ(イシサンゴ目)は附属書IIの対象
CITES事務局の情報によると、造礁サンゴを含むイシサンゴ目(Scleractinia)はScleractinia spp.として附属書IIに掲載されています。特定の種だけでなく、イシサンゴ目に属する生体や骨格が広く規制の対象に含まれる扱いになっている点が特徴です。
この背景には、イシサンゴ類は種によって骨格の形態がよく似ており、流通の現場で種まで正確に判別するのが難しいという事情があります。実際、CITES第19回締約国会議(2022年、パナマで開催)では、税関などの検査官がイシサンゴを識別できるよう支援するための識別ガイドが発表されています。CITESの実務では種までの同定が難しいため、属レベルでの識別が基準として扱われています。ミドリイシ(Acropora)やハナヤサイサンゴのように種数が非常に多いグループでは、この傾向がとりわけ顕著です。
ソフトコーラルの扱いは種によって異なる
一方、ソフトコーラル(八放サンゴ亜綱 Octocorallia)については、イシサンゴ目のように目単位でまとめて掲載されているわけではなく、種によって扱いが分かれます。例えばアオサンゴ(Heliopora coerulea)を含むグループは附属書IIの対象として掲載が確認できますが、ウミキノコ(Sarcophyton)やトサカ類のように観賞魚店やホビイストの間で広く流通している属がすべて同様に規制対象となっているかどうかは、種によって異なる可能性があります。ソフトコーラルを購入・記録する際に規制対象かどうかが気になる場合は、断定せずSpecies+のデータベースで学名から個別に確認するのが確実です。
日本国内での実施の枠組み
日本国内でCITESを実施する仕組みとしては、外国為替及び外国貿易法に基づく輸出入の水際規制と、種の保存法に基づく国内での取引規制が組み合わされています。
- 附属書I掲載種:国際取引だけでなく国内での譲渡等についても、種の保存法上の国際希少野生動植物種として規制を受ける
- 附属書II掲載種:商業目的の取引自体は可能だが、輸出国政府が発給する許可書の確認など、通常の輸入とは異なる手続きを経て国内に持ち込まれる
- 附属書III掲載種:原産国に応じて輸出許可書や原産地証明が求められる
具体的な申請窓口や様式、必要書類は取引の形態や品目によって異なるため、詳細は経済産業省や税関など所管機関の案内を確認するのが確実です。
ホビイストとして知っておきたい実務的な意味
サンゴを飼育する個人の立場から見ると、重要なのは次の点です。
- 国内で流通している観賞用サンゴの多くは、正規のアクアリウム輸入業者が必要な許可手続きを経て輸入した個体である
- 個人が海外から未許可のままサンゴを直接持ち帰ったり取り寄せたりする行為は、附属書掲載種の規制に抵触する可能性がある
- 趣味目的の少量の取引であっても、CITES対象種であれば正規の手続きが必要になる場合がある点は覚えておきたい
- 購入するサンゴが規制の対象かどうか具体的に知りたい場合は、学名を確認したうえでSpecies+などの一次情報にあたるのが確実である
reefbookは、サンゴの図鑑と飼育個体の記録を目的としたサイトであり、輸入代行や許可取得の代行といったサービスは行っていません。規制に関する最終的な判断や手続きについては、必ず一次情報や所管機関の案内を確認してください。
まとめ
造礁サンゴはCITES附属書IIの対象として広く規制されている一方、ソフトコーラルは種によって扱いが異なるため一律には言えません。ホビイストとしては、購入先が正規の手続きを経た個体を扱っているかを意識しつつ、気になる種があればSpecies+などの一次情報で確認する習慣を持っておくと安心です。サンゴの選び方については通販でサンゴを買うときに知っておきたい注意点やワイルド個体と養殖(アクアカルチャー)個体の違いもあわせて参考にしてください。





