クマノミの繁殖|ペアのでき方・雄性先熟(性転換)・産卵から孵化まで
クマノミの仲間は、雄から雌へ性が変わる雄性先熟の魚です。群れの順位とペアのでき方、産卵と雄による卵の世話、水温で変わる孵化までの日数を、学術論文と研究機関の資料をもとに整理します。クマノミの仲間は、サンゴ水槽でイソギンチャクとともに飼われることの多い魚です。

この記事のポイント
クマノミの仲間は、雄から雌へ性が変わる雄性先熟の魚です。群れの順位とペアのでき方、産卵と雄による卵の世話、水温で変わる孵化までの日数を、学術論文と研究機関の資料をもとに整理します。クマノミの仲間は、サンゴ水槽でイソギンチャクとともに飼われることの多い魚です。
クマノミの仲間は、サンゴ水槽でイソギンチャクとともに飼われることの多い魚です。イソギンチャクとの共生の仕組みはクマノミとイソギンチャクの共生で扱ったので、この記事では繁殖、つまりペアのでき方と性転換、産卵から孵化までの流れを、学術論文や研究機関の資料で確かめられる範囲で整理します。
雄から雌へ変わる「雄性先熟」
魚の中には、一生のうちに性が変わるものがいます。先に雌として成熟し、のちに雄へ変わる型を雌性先熟、先に雄として成熟し、のちに雌へ変わる型を雄性先熟と呼びます。クマノミの仲間は後者の雄性先熟です。
1977年に Nature に掲載された H. Fricke と S. Fricke の論文は、クマノミ属(Amphiprion)で、社会的に制御される雄性先熟の性転換を報告しました。雌が雄に対して攻撃的に優位に立つことで、ほかの個体が雌になるのを抑えているという内容です。同じ抄録は、雌性先熟の魚では逆に、優位な雄が雌に対して攻撃的に振る舞うことでほかの雄の出現を抑える例が知られていると対比しています(Fricke & Fricke 1977, Nature)。
カクレクマノミ(Amphiprion ocellaris)について、魚類の学術データベース FishBase は、雄性先熟の雌雄同体であることを記載し、性転換が起こる体長として全長 4.4cm という値を載せています(FishBase:Amphiprion ocellaris)。
群れの中の順位とペアのでき方
クマノミの群れには、体の大きさに沿った順位があります。2003年に Nature に掲載された P. Buston の研究は、クマノミの一種 Amphiprion percula で、個体が群れの中の順位に応じて体の大きさと成長の速さを調整し、すぐ上の順位の個体との間に一定の体格差を保っていることを示しました。順位をめぐる争いを避ける戦略と考えられています(Buston 2003, Nature)。
飼育下でペアを作る方法としては、性的に未熟な若い個体の群れから、大きい個体と小さい個体を組み合わせる方法が紹介されています。カクレクマノミの飼育法をまとめた Roux らの論文は、この方法を示したうえで、最も攻撃的で優位な個体が繁殖する雌になり、2番目の個体が雄になると説明しています。また、新しく作ったペアが初めて産卵するまでには、6か月から2年かかるとしています(Roux et al. 2021, Journal of Experimental Zoology Part B)。フロリダ大学の普及資料も、小さい個体を雄、大きい個体を雌にする意図で組み合わせる方法を挙げています(UF/IFAS EDIS:FA224)。
組み合わせた個体どうしの争いが続いてどちらかが傷つくような場合は、早めに離すことも考えます。判断に迷うときは、アクアリウム専門店や専門家に相談してください。
産卵と卵の世話
クマノミの仲間は、硬い面に卵を産みつける魚です。FishBase は、カクレクマノミの卵は沈む性質で基質に付着すること、雄が卵を守り、新しい水を送ることを記載しています。前出のフロリダ大学の資料も、粘着性のある楕円形の卵がタイルや素焼きの鉢などに産みつけられ、雄が孵化まで巣を守って掃除すると説明しています。
Roux らの飼育施設では、テラコッタの鉢を産卵の基質として入れ、ペアが 12〜15 日ごとに 100〜500 個の卵を産んだとしています。照明は明期14時間・暗期10時間、水温は 26℃に保たれていました。1回あたりの卵の数や産卵の間隔は、個体や飼育条件によって変わると考えてください。
孵化までの日数は水温で変わる
卵は日がたつにつれて色が変わります。インドの Madhu らは、飼育下のカクレクマノミの卵の色の変化を次のように記録しています(Madhu et al. 2012, Journal of the Marine Biological Association of India)。
- 産卵からの最初の2日ほど:淡い黄色か白
- 3〜5日目:黒っぽい色
- 6〜7日目:銀色
同じ論文では、水温 28.5±0.5℃で、受精から168時間後に孵化しています。一方、Roux らの条件では、水温 26℃で受精から10日後に孵化するとしています。孵化までの日数は、水温などの条件によって変わることがわかります。Roux らも、水温によって産卵の頻度や子の発生の速さが変わると述べています。また、孵化は消灯からおよそ1時間後に起こるとしています。
稚魚まで育てるには別の準備が要る
孵化した仔魚は、しばらく水中を漂って暮らします。フロリダ大学の資料は、クマノミの仔魚は栄養を強化したワムシを最初の餌としてよく食べ、その約1週間後から孵化したてのアルテミアを食べるようになること、着底までの期間は種や飼育条件によって平均で孵化後10〜20日であることを記しています。
つまり、産卵が見られたとしても、稚魚まで育てるには生きた餌の培養や仔魚用の水槽など、通常のサンゴ水槽とは別の準備が必要です。同じ水槽の中では、仔魚がポンプに吸い込まれたり、ほかの魚に食べられたりするおそれがあります。
クマノミの仲間が暮らすイソギンチャクについては、図鑑のセンジュイソギンチャクやハタゴイソギンチャクの頁で特徴を確認できます。FishBase は、カクレクマノミの共生相手として Heteractis magnifica(センジュイソギンチャク)や Stichodactyla gigantea(ハタゴイソギンチャク)などを挙げています。




