ライブロックから出てくる生き物の見分け方|ウミケムシ・カニ・シャコ・ヘビガイ・バロニア・マジャノ
ライブロックやサンゴの土台から現れるヒッチハイカーのうち、よく話題になる6つのグループについて、見分け方の手がかりと向き合い方を整理します。見た目だけで有害と決めつけず、観察してから判断する手順も紹介します。

この記事のポイント
ライブロックやサンゴの土台から現れるヒッチハイカーのうち、よく話題になる6つのグループについて、見分け方の手がかりと向き合い方を整理します。見た目だけで有害と決めつけず、観察してから判断する手順も紹介します。
ライブロックや、サンゴの土台になっている岩には、目に見えない大きさの卵や幼生を含めて、さまざまな生き物が付いてきます。水槽に入れてしばらくすると、岩のすき間から思いがけない生き物が顔を出すことがあり、一般に「ヒッチハイカー」と呼ばれます。その多くは残り餌やデトリタスを食べる掃除役か、水槽の中で目立たずに暮らすだけの存在ですが、中にはサンゴや魚とうまく共存できないものもいます。この記事では、よく話題になる6つのグループについて、見分け方の手がかりと向き合い方を整理します。ウミウシやプラナリアなどの害虫はサンゴの害虫対策、セイタカイソギンチャクはアイプタシアの駆除と予防で詳しく扱っています。
まずは観察してから判断する
ヒッチハイカーの多くは夜行性で、照明が点いている間は岩の奥に隠れています。消灯後しばらくしてから懐中電灯で静かに照らすと、昼間には見えない生き物の動きがわかります。見つけたら、写真を撮り、いた場所と時間、近くのサンゴの様子を記録しておきましょう。
同じ仲間でも種によって性質が違い、同じ種でも水槽の条件や個体の大きさで振る舞いが変わります。ここで紹介する特徴は「疑うきっかけ」であって、見た目だけで有害と決めつけるものではありません。
動き回る生き物:ウミケムシ・カニ・シャコ
ウミケムシの仲間
岩のすき間から、たくさんの毛が生えた細長い虫が出てくることがあります。多くはウミケムシ科(WoRMS: Amphinomidae)などの多毛類で、水槽では残り餌をあさる姿がよく見られます。注意したいのは体の剛毛です。香川県水産試験場の資料では、日本の沿岸にすむウミケムシの剛毛は中が空洞で毒液が詰まっており、素手でつかむと刺さって強く痛み、炎症を起こすことがあると紹介されています(香川県:素手でつかむと危険です!海の毛虫?(PDF))。水槽で見つけた個体も素手では触らず、ピンセットや手袋を使いましょう。数が急に増えた場合は、餌の与えすぎを見直すきっかけになります。
カニの仲間
小さなカニも代表的なヒッチハイカーです。枝状のサンゴの間にすむサンゴガニ科(WoRMS: Trapeziidae)のように、サンゴと関わりながら暮らすグループもあり、その関係はサンゴ礁の共生生物で紹介しています。一方、岩場に多いオウギガニ科(WoRMS: Xanthidae)など雑食性のカニは、成長するとサンゴのポリプや小さな生き物をつまむことがあります。夜にサンゴの上で何をしているかを確かめてから判断しましょう。
シャコの仲間
シャコは口脚目(WoRMS: Stomatopoda)に属する甲殻類で、大きく発達した捕脚で獲物を捕らえます。小さな魚やエビが夜のうちに次々といなくなる場合は、疑ってみる価値があります。夜に岩の中から「パチッ」という音が聞こえることもありますが、テッポウエビの仲間も似た音を出すため、音だけでは決められません。姿を確認するまでは、岩ごと取り出すかトラップを使う方法が現実的です。
岩に付く生き物:ヘビガイ・バロニア・マジャノ
ヘビガイ
岩に固着した細い管から、白い糸のようなものを広げる生き物はヘビガイの仲間(ムカデガイ科、WoRMS: Vermetidae)かもしれません。巻貝の一種で、粘液の網を広げて水中の粒子を集めて食べます。少数なら目立たないこともありますが、増えると岩やサンゴの基部を覆い、粘液の網が隣のサンゴにかかることがあります。
バロニア
岩に付いた、つやのある緑色の玉はバロニア属の緑藻です。WoRMS: Valonia ventricosaのように、一つの細胞が大きな泡のような形になる種が知られています。取り除くときは潰さず、付着している部分ごと外すのが無難です。増え方が速いときは、海水水槽の栄養塩管理の考え方や海水水槽のコケ・藻類対策もあわせて確認してください。
マジャノ
「マジャノ」はアクアリウムで使われる流通上の呼び名で、緑や茶色の小さなイソギンチャクを指します。学名のはっきりした種名ではなく、分類データベースのWoRMSでも「majano」という名前の登録は見当たりません。アイプタシア(WoRMS: Exaiptasia diaphana)と同じく岩の上で増えやすく、近くのサンゴを刺すことがあるため、見つけた段階で数と広がり方を記録しておきましょう。
判断に迷ったときの進め方
正体がわからないときは、次の順番で進めると落ち着いて対応できます。
- 写真と動画を撮り、いた場所・時間・周りのサンゴの状態を記録する
- 数日かけて夜の行動を観察し、サンゴや魚への影響があるかを確かめる
- 取り出す場合は、ピンセット・トラップ・岩ごとの取り出しなど、ほかの生き物を傷つけにくい方法を選ぶ
- 取り出した生き物は別の容器で観察し、正体を確かめてから扱いを決める
- 判断がつかないときは、写真を持ってアクアリウム専門店や専門家に相談する
新しく岩やサンゴを入れる前に持ち込みを減らしたい場合は、サンゴの選び方と持ち込み時のトリートメントやライブロックのキュアリングとアクアスケープも参考になります。ヒッチハイカーは水槽の生き物の多様さの表れでもあります。慌てて取り除く前に、まず観察する習慣をつけておきましょう。


